2012年9月7日金曜日

Acrobat等を使ってPDF上で想定整形地を描く方法




◆不整形地?想定整形地??


相続贈与その他の案件で土地の評価をする、ということがある。

相続税等のシミュレーションとかだと、路線価を調べて、登記上の地積を乗じて土地評価額を算出するという、簡易的な方法で済ますこともある。
比較的キレイな形の土地であれば、まぁそれでも良いのだが、実際にはそのような土地ばかりではない。

もう少し評価の精度を上げようと思うと、地積測量図などを入手して、いびつな土地は「不整形地」として補正して評価(評価減)することになる。
その不整形地の評価の際に登場するのが「想定整形地」だ。













不整形地の場合、上記サイトにあるように、仮の図形(想定整形地)を描いてその面積を計算し、実際の地積との比較で補正率を求めることになる。




◆想定整形地を描くためのツール


想定整形地等を描くのに、土地の評価を多く扱っているようなところは、CAD等図面作成のための専門のソフトを使うことが多いかと。
あるいは、不整形地等の評価用に専門の有料ソフトもいくつかあるようだ。

ただ、これらのソフトは高価であったり、使いこなすまでに苦労しそうなイメージがある。
もっと手軽に、地積測量図がPDFで手元にあるのだから、PDF上で出来ないか、と考えた。

要は、想定整形地であれば、評価対象土地を囲むように、ある一定の矩形を描ければ良いのだ。
Acrobat等のPDF編集ソフトで矩形を描く注釈機能はあるので、これを使えばと思うのだが、ひとつ問題が。

地積測量図上の評価対象土地は、必ずしも正面となる路線が真下にある、などの規則性がない。
つまり、矩形の角度が変えられないと意味が無いのだが、Acrobatその他のソフトでは矩形を回転させて任意の角度に描くという機能がなく、垂直にしか描けない。
AndroidのPDFアプリでそのような機能を持つものはあったのだが、PCで使用するソフトではちょっと見つけられなかった。

多角形の注釈ツールで任意の角度に四角形を描くことも可能ではあるが、角度が必ず直角になるとは限らないので正確性に欠けるし、逆に直角にしようと思うと垂直か45度(Shiftキーを押しながら)の角度しか描けない。


そこで「Acrobat(Std/Pro)」にある「ものさしツール(距離ツール)」
PDF上に描いた直線の距離を測定する機能である。


ちなみに、「Acrobat Reader」は無料だが、上記の「Acrobat(Std/Pro)」は有料のソフトで、決して安くはない。
無料のソフトだと「PDF-XChange Viewer」に同じ機能があるのでオススメ。




◆具体的な描き方


次の地積測量図はある地域の「地番504-19」のものであるが。
「504-19」はキレイな形の土地で面白くないので、「504-17」を評価対象土地と仮定する。

まず、大事なのは、測量図の縮尺を確認し、測定比率を設定すること!



今回の測量図は縮尺が「1/250」となっている。
距離ツールを選択したら画面の適当な箇所で右クリックすると「測定比率を変更」というメニューが出てくるので、今回は「1mm = 0.25m」に設定。



距離ツールで、正面路線に面した間口(次図のAB間)のAを基準とし、その延線を適当な箇所で止める。



いま引いた線の両端から垂線が出て、かつ、平行線上に矢印線とその線の長さが表示されるので、その平行線が次図のDに重なるまで引っ張る。



次に、最初に適当な箇所で止めていた部分を、線がCに重なるようにABの延線上でスライドさせる。



これで自由な角度に矩形(=想定整形地AEFG)が作成できる。


この作業だけで想定整形地を描くとともに、想定整形地の間口距離も測定できていることになる。


あとは距離ツールを使って、想定整形地の奥行距離を測る。



また、今回は、対象土地である「504-17」の地積は測量されておらず不明だ。
そこで、PDFの「面積ツール」を使って地積を求めることも出来る。
もちろん不整形地(対象土地)の間口距離(AB)も「距離ツール」で測る。



ABCDの4点を「面積ツール」で囲むと自動的に面積が計算される。
あくまでも概算だし、そもそも登記簿謄本に地積は記載されてるが。
登記上の地積は必ずしも正確ではなく、測量図上で地積を求めてみると登記上の地積と明らかに違うというケースもあるので一応測っておく。




◆地積測量図(PDF)の入手


地積測量図(紙)は、登記所に備え付けられているので、料金を払って手続きすれば入手することが出来る。(必ずしも全ての土地に測量図が備え付けられている訳ではないが)

で、イマドキは、測量図もオンラインで入手することが可能だ。

ひとつは、登記・供託オンライン申請システムというサイトを利用して、オンラインで測量図を申請(料金はネットバンク決済)し、紙の測量図を郵送してもらう方法。

もうひとつは、登記情報提供サービスというサイトを利用して、測量図をPDFファイルでダウンロード(料金はカード決済等)する方法だ。
登記情報提供サービスは、こちらの記事にも書いた通りかなり使いやすくなっているし、こちらの方がラクかと。

紙の測量図だと、スキャナーで取り込んでPDFファイルにするのだが、A3サイズの用紙なので、ScanSnap等であれば半分に折って両面スキャンという感じで、ややメンドクサイ。(しかも、ズレないように正確にやる必要があるし)


直接PDFファイルをダウンロードして使用する場合、ひとつ問題がある。
登記情報提供サービスのサイトを利用して入手した地積測量図等のPDFファイルは、パスワード保護されており、機能的に一部制限されている、ということ。
つまり、PDFファイル上で注釈などが追加できないようになっている。

よって、まずは編集が可能なPDFファイルを作成する必要がある。

印刷は可能なので、仮想PDFプリンタで「画像(イメージ)として印刷」する欄にチェックをすることにより、少しだけ不鮮明にはなるが、パスワード保護されていない(利用制限のない)PDFファイルを作成することが出来る。



仮想PDFプリンタは、なんでも良いのだが、例えばPrimoPDFとか、Bullzip PDF Printerとか、CubePDFあたりで良いかと。




CAD系のソフトや専用ソフトを使ったことがないのであまり比較も出来ないが。
今回の方法だと、専用ソフトでは自動化されている部分も手作業になったり、精度の点でやや甘かったり、ということはあるかも知れない。
が、いつもの使い慣れたソフト・ファイル形式でサクッと出来るという点では、まぁ、お手軽かな、と。

あ、ちなみに、今回の話はWindowsが前提で、Macは一切考慮していない。
Mac版のAcrobatに同じ機能があるのかどうか不明だし、代替のフリーツールも見つけられなかったので。




4 件のコメント:

  1. これ、Eを動かす際に、C,Dを接したままにするのが大変じゃありません?

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    1. 匿名 様

       コメント有難うございます!
       確かにEを動かすとC・Dがズレてしまいますね。
       先にCを合わせて、その後でFGの線を調整してDに合わせる感じでしょうか。
       FGの線は一定方向にしか動きませんのでもうCの部分はズレませんし。

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    2. AEの距離がそれなりに長ければいいのですけど、AEが短いと調整がキツイですよね。
      もともとAEの距離だけを測るためのツールだからなんでしょうけど、SHIFTとかで固定できてもいいのに、と思います。

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    3. 匿名 様

       なるほど。個人的にはあまりこのへんで不便に感じたことはないのですがそういうケースもありますか。あ、Shiftキーは私も押しましたw

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